野沢菜

野沢菜は旨い。

漬けたての青々した「草を食べてる」感のある時期も美味だ。

 

漬けてから5日から1週間程度で、上質な野沢菜は粘り気が出てくる。このころが私は最も美味しいと思う。この旨さは、約一ヶ月程度続き、私はごはんのおかわりを欠かさなくなる。

 

漬けてから一ヶ月過ぎた当たりから、野沢菜の粘り気は完全に消え、青臭さも無くなり、お店で売っているような「漬け物」になる。この頃になると、野沢菜の葉の部分で、米を海苔巻き状に巻いて食べるのが、米と塩気のバランスがベストとなる。また、この頃は細かく刻んでご飯に合えても美味しい。この状態は、一月の末まで続く。

 

更に2月に入ると野沢菜は緑色から少し黄色みがかかってくる。古漬けへの序章である。塩気の角が取れ、我が家では鷹の爪を少し入れて着けるのだが、その鷹の爪の辛さと共に、何とも言えないコクが出てくるのだ。そして、2月も下旬になると、ほんの少しだけ、味の奥に乳酸発酵の酸味が感じられるようになる。

 

3月になると信州の寒さも一段落し、野沢菜は黄色みが更に強くなり、古漬けへの序章である、べっ甲色を帯びてくる。と同時に乳酸発酵が進み始め、酸味が表に出てくる。これが早い年もあれば遅い年もある。この辺は、時の運。この頃の野沢菜は、初冬から食べ続けてきているため、既に長く歩んできた友人のような存在になる。旨いのだ。そして、他の料理にも馴染むようになる。

 

4月に入ると野沢菜は完全に熟成期に入る。酸味が完全に立ってきて、ごはんのおかずには、少しだけ向かなくなるが、野沢菜を細かく刻んで人参と鰹節とごま油、少しの砂糖で炒めるとこれまた美味な逸品となる。同様に炒飯に入れても、キムチの素と合えても、素晴らしく合うのです。

 

5月に入ると完全に酸っぱい野沢菜漬けになる。この頃になると、そのまま食べるのは困難になる。木曽地方のすんき漬などは、酸味を楽しむものだから、オッケーでしょうが、野沢菜はちょっとね。なので、漬物樽から取り出して、水で洗い、味の素と鰹節を振りかけて、場合によっては醤油をかけたりして食べます。一時期より、醤油をかけるお宅は減りましたが、昔はアホかという程かけてる家もありました。

 

そして、この頃になると、野沢菜シーズンも終わり、我が家では最後の一株を刻んで冷凍しておいて、チャーハンや野沢菜炒めを作るのに使ったりします。

 

そうそう、野沢菜は蕪系の植物なので、葉っぱの下には結構な大きさの蕪が付いています。

この蕪が旨いのです。

個人的には、千枚突きで細かく刻み、油味噌炒めにして食べたり、信州名物の「おやき」の具にしたり、にらせんべいという、信州版「お好み焼き」の具にしたり。普段は捨てられて畑にすき込まれでしまう存在ですが、もったいないなぁ。

 

そんな、野沢菜と炊きたてのご飯が、私の中では「最後の晩餐」です。